中国の人口は13億人。いうまでもなく、世界のトップ。エネルギー消費量が世界二位。エネルギー消費量が第二位であれば、Co2も世界第二位となる。また貿易総額は、日本を抑え第三位となった。世界における中国の影響は、功罪両面にわたり、益々大きなものとなっている。
経済成長・エネルギー・環境保護
(社)日中科学技術文化センター
参与小針俊郎
1.はじめに
2.国内総生産(GDP)
3.エネルギー
4.環境問題
5.おわりに
初出:2004年11月15日『新宿職安ハローワーク講座』「中国の経済事情」
本稿:2006年12月20日『当社団ホームページ』
1.はじめに
中国の人口は13億人。いうまでもなく、世界のトップ。エネルギー消費量が世界二位。エネルギー消費量が第二位であれば、Co2も世界第二位となる。また貿易総額は、日本を抑え第三位となった。世界における中国の影響は、功罪両面にわたり、益々大きなものとなっている。
しかしながら、国内総生産(GDP)は、世界5位。日本の1/2。一人あたりでは、1700ドルという小額であり、日本の1/20に過ぎない。未だ開発途上国の段階に留まっている。 雇用の確保も難しく、都市部失業率も10%を超え、農村部に至っては、1億5千万人の余剰労働力、即ち、失業予備 軍を抱えている。
中国政府としては、雇用を確保し、失業者を減少させなければならず、高度成長の継続が必須であり、エネルギーの更なる消費が当然の帰結となる。従って、新たなエネルギー源の開発が、至上命題となった。
日本にとって、中国は最大の貿易相手国であり、鉄鋼、造船、石油化学などオールドエコノミーばかりでなく、経済界は中国特需で潤った。しかし、エネルギーでは、南シナ海におけるガス田の開発が、環境に関しては、新潟県の酸性雨が、それぞれ問題となってきている。
2.国内総生産(GDP)
中国のGDPは、名目では2兆2288億ドルと日本の半分に過ぎず、世界第五位だが、購買力平価(PPP)に換算すると8兆5726億ドルと日本の倍以上になり、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国となる。WTO加盟後の5年間で、名目GDPも2倍になった。
しかし、人口は13億人を超え、世界の首位であり、1人当りのGDPは1700ドルに過ぎず、発展途上国の地位に甘んじている状況である。日本の人口が1億3千万人弱であり、ほぼ中国の1/10であるから、名目では1/20、購買力平価でも、1/5という格差になる。
失業を無くす為には、経済成長を高め、パイを大きくして、雇用
の増大を図らなければならない。経済成長を高める為には、土地と
労働力はあるのだから、資本と技術さえあればよい。
中国国内には、高度成長を維持するだけの資金も無かれば、技術も無い。
必然的に、外国の資金と技術が必要になる。鄧小平が
改革開放に踏み切った理由はここにある。
他方、資金と技術を提供する外資系企業は、安価な
製品を本国或いは第三国に輸出して投資の回収に努め
なければならない。
従って、高度成長維持の為に、外資系企業による
輸出ドライブがかかる。輸出拡大にはWTO加盟が必須
であった。2001年の加盟から、この5年間で輸出は3倍に
なったが、その58%は、外資系企業によるものである。
(データ、単位100万ドル)
世界銀行の発表するGDPとGDPの購買力平価換算値から計算
(2005年度のデータ、単位100万ドル)
Country額面GDP....購買力平価GDP...物価水準
発電量(キロワット時) 国内総生産(GDP)
3.エネルギー
中国の経済は、見事なまでに高度成長を継続しているが、その燃料が石油と石炭である。中国特需で日本も恩恵を被ったが、副作用も大きかった。資源インフレである。石油がバレル当り20ドルから60ドルに3倍増。鉄鋼用原料炭もトン当り100ドルに倍増した。
電力不足により、多くの企業が、操業に影響を受けている。取り分け、夏のクーラーが大きくきくようになってきた。優遇されている外資系でさえ、電力の供給がままならないのであるから、他の企業群は押して知るべしである。地方政府が、発電所の建設に躍起になったのは、このためである。
中国の経済成長は、エネルギー消費と平行に推移してきた。経済成長率と電力の伸び率は、1対1の関係で推移してきた。経済成長率とエネルギー消費率には、0.7の弾性係数をかける。経済成長率を1%上げるためには、エネルギーの供給を0.7%上げなければならないのである。今後9%の成長を達成しようとすれば、6.3%の供給が必要となる。
2004年9月、シドニーにおける国際会議で、周大地エネルギー研究所長が、2020年の総エネルギー消費と発電能力見通しを発表した。これによれば、石炭の総需要は31億トンに達し、石炭火力による発電能力は7億8千万キロワットまで増設される。因みに、石油の総消費量も6.5億トンに達し、自国生産の2億トンを差し引いた4.5億トンが中国の輸入量となり、日本の石油輸入量の2倍となる。
4.環境
世界のGDPは43兆5567億ドル。中国が2兆2288億 ドルと5%に過ぎない中で、鋼材消費は世界の25%、 石炭消費は同30%、セメント消費が同50%、石油 消費は同10%を占めるといったようにエネルギー・ 資源消費型成長をもたらし、資源制約・環境保護に 大きな負荷をかけ、投資偏重による欠点が顕著になり、持続可能性に大きな疑問を投げかけている。
Co2(二酸化炭素)は、日本の5%に対して、中国は 15パーセントを占め、世界第二位。これが経済成長と 平行して増大していけば、先進国の削減分を 大きく上 回ってしまうことになる。So2(二酸化硫黄)についても、 中国の排出量は、2500万トンを超え、世界最大。全国30%の地域で、酸性雨が降っている。
中国のエネルギー源別最終エネルギー消費における 石炭の割合は、40%に及ぶ。更に電力20%の3/4を 石炭が占めるので、エネルギー源としては、石炭が 過半を占めることになる。その総計は13億トンを 超える。即ち、中国人1人が1年間で1トンを消費し ている計算になる。
石炭が中国の主要なエネルギー源であることは、 いうまでもない。問題は、脱硫がキチンと行われて いないことである。中国国内の酸性雨は益々酷くな
ってきている。日本も傍観していられない。新潟の酸性 雨は、偏西風に乗って飛来する。中国産の硫黄が主な原因 である。
一方、炭鉱事故による死傷者が激増している。炭鉱の労働安
全にも、大きな問題がある。経済成長至上主義の欠陥が、一番
弱いところに現れてきた。炭鉱事故の裏には腐敗ありとも言わ
れる。石炭増産によるエネルギー確保の限界が見えてきたとい
っても、過言ではない。
5.おわりに
となった。即ち、経済発展、エネルギー、環境保護の
トリレンマ(三重苦)を解決することが、地球上全て
ての国に求められたのである。中国も例外ではない。
中国自身が持続的発展のために、環境問題を解決しなけ
ればならなくなったのである。
日本の高度成長は、石油の消費量と並行して推移してきた。
1バレル2ドルという安価な石油に支えられた成長率であった。72年のドルショック(1ドル360円の固定相場)と73年の石油ショックにより、それまで8%であった成長率は、4%にダウンする(85年のプラザ合意以降は1%)。
日本が切り抜けることができた理由は、二点ある。 第一は、雇用が確保されていたこと。第二が省エネ 技術の開発である。
中国の場合は第一の失業問題が解決されていない。
従って、成長率をダウンできる余地が、甚だ少ない。
そのため、貴重な資金が成長率の維持に向けられる
ことになる。第二に、省エネ技術の立ち遅れがある。
更には、資金不足という問題がある。いきおい、エネルギー
の確保に無理がかかる。小規模不安全炭鉱の存在が、それで
ある。また省エネ技術・設備にも金が回らない。まさに
トリレンマ。中国語でいう三重困境に陥ってしまった
という現状である。中国政府としても、現状を踏まえ、
ナローパスを慎重に歩むしかない。トリレンマが解決
できず、中国経済が破綻すれば、日本にも、大きな
影響が生じる。何といっても、最大の貿易相手国なのである
から。一蓮托生といっても過言ではない。
幸い日本には、優れた省エネ技術がある。エネルギー効率が
日本の半分という低さであるから、技術支援を行う余地は充分に
ある。中国大使館科学技術処の二等書記官である李鐘、王挺両氏
は、炭鉱安全衛生管理の研修を担当しており、日本側の好意に感
謝していた。三峡ダムの死傷者も、前田建設のコンサルで
激減した。安全衛生の管理手法でも、日中間の協力は益々不可欠の
ものとなっている。
以上

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