2007年4月12日、温家宝総理が訪日。翌日、国会において
演説を行い、「中国は改革開放29年来の大きな成果を得たが、
人口は多く、底が浅く、甚だしく不均衡な発展であり、未だに
発展途上国である」と 位置づけ、「その発展途上において、
資源・エネルギー・環境がボトルネックとなっている」と指摘
した。
中国政府が発表した昨年の都市登録失業率は、4.2%。失業の実態
を反映していないことは、明らかである。都市の失業率は、10%を超えているとも言われる。更には、農村部の余剰労働力、即ち失業予備軍1億5千万人が控えている。
雇用問題を緩和するには、求人数を増やさなければならず、企業の発展が必要となり、国内総生産(GDP)というパイを大きくしていく他はない。
昨年までの5年間でも、毎年平均で10%の成長を遂げているのは、
雇用の確保が最重要課題だからである。失業が増えれば、治安も悪くなり、政治経済にも、悪影響を及ぼす。高度成長の持続が必要である。
2.石油・石炭の鯨飲馬食
GDP10%という高度成長に必要なエネルギーは、果たしてどの程度であろうか。消費電力量は、02年の1兆6千万kwhから06年の2兆8千万kwhまで同じく10%の伸び、即ち弾性値が1であった。一次エネルギー消費総量も、ほぼ同じ数値を示した。国務院が期待した弾性値0.5は、見事に裏切られた。確かにGDPの世界に占めるシェアは5%に達することができたが、エネルギー消費は急増している。
石油3億トン(世界の10%)・石炭23億トン(同30%)を消費するに至り、その環境負荷も、限界に達してしまった。CO2は、15%と日本の3倍。SO2は、2500万トンを超え、比較の仕様も無いほどである。今や、中国全土の90%が、酸性雨にさらされ、もはや猶予の余地はない。
日本の消費量は石油2.3億トン・石炭1.7億トンだが、GDPは、中国の2倍である。単位GDPあたりエネルギー消費量が、全く異なる。
3.日本は「新しいエネルギー大国」?
中国では、エネルギーを所管するのは、発展・改革委員会である。温家宝総理訪日の1週間前、同委員会のホームページに「新しいエネルギー大国 日本」というタイトルの一文が掲載された。
まず、日本の単位GDPあたりエネルギー消費量がアメリカの37%に過ぎず、ハイブリッドカーの走行距離が欧米車の2~3倍に達し、日本の省エネ技術が世界最高水準を誇り、中国にとっても必要不可欠であり、京都議定書の温暖化ガス規制をクリアーするには、アメリカでさえ頼らざるを得ないと指摘する。
次に、日本において、発電の熱効率が50%に高まり、家電の消費電力が40%減少し、エタノール、太陽熱などの新エネルギーの技術向上が著しいと説明する。
最後には、石油が1バレル60ドルになった以上、省エネ・新エネルギーの技術を新しい「資源」とする時代が到来したと、結んでいる。そこには、日本に学べという意思が見てとれる。
4.戦略的互恵関係におけるキー・テクノロジー
中国は、経済発展、資源・エネルギーの大量消費、環境汚染というトリレンマ(三重困境)に陥ってしまったが、これを解決するキー・テクノロジーこそ、省エネ・新エネルギー技術に他ならない。
胡錦涛総書記・温家宝総理が目指しているものは、調和社会の建設であり、社会と自然の調和である。即ち、持続可能な発展を目指しており、経済発展、資源・エネルギー、環境という三者の調和が必須となり、従って、省エネ・新エネルギー技術の導入が不可欠である。国際的に、ポスト京都議定書の重要性が益々高まり、温家宝総理の今回の京都訪問も、環境重視の姿勢を表したものであろう。
中江要介元中国大使は、改革開放の始まった頃、「中国の目的は、日本の技術と資金」と語った。技術協力の重要性は、今も変わらない。変わったところは、量の技術から質の技術への転換である。中国の発展は、日本にも大きな利益をもたらす。日本側もキー・テクノロジーの供与をビジネスチャンスとして捉え、戦略的互恵関係構築の一端を担うことが求められている。

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