中国の対外経済と日本(2001年~2005年)

1.はじめに

  21世紀が始まった20011110日、ドーハ会議において、中国のWTO加盟が承認された。これまでの5年間において、中国の外貨準備高は5倍を超え、貿易黒字も4倍、輸出額は3倍に増え、国内総生産(GDP)でも、2倍に達しようとしている。

 

中国の対外経済と日本

2001年~2005

 

(社)日中科学技術文化センター

 1.はじめに

 2.中国の対外経済

 1)対外貿易

 2)外資導入

 3)国際収支

 3.日中経済関係

 1)日中貿易

 2)日中投資

 3)元の切上げ

 4.おわりに

  

初出:2005111日『新宿職安ハローワー講座』「中国経済と元の切上げ」 原稿:20061220日、上記原稿を加筆、当社団ホームぺージに掲載

 

1.はじめに

  21世紀が始まった20011110日、ドーハ会議において中国のWTO加盟が承認された。これまでの5年間に、中国の外貨準備高は5倍を超え、貿易黒字も4倍、輸出額は3倍に増え、国内総生産(GDP)でも、2倍に達しようとしている。

 2005年、中国の貿易総額は14100億ドル。内訳は輸出

7623億ドル、輸入6476億ドル。同じく日本は、総額1

621億ドル、輸出5948億ドル、輸入4672億ドル。中国は、

本を凌駕し、輸出入ともに世界第三位の貿易大国となった。中国に

とって最大の輸入先は日本であり、日本にとっては中国である。

そして、日中両国の最大の輸出先がアメリカであり、

アメリカの貿易赤字は巨額に昇り、その中でも中国貿易の

赤字が群を抜き、その主な原因は長期にわたって、

1ドル8元に維持されてきた元安にある。中国のGDPは、

22288億ドルと日本の半分であり、しかも、人口は13

を超え、世界の首位であり、1人当りのGDP1700ドルに

ぎず、展途上国の地位に甘んいる状況である。人口が

日本10倍であるら、一人当たりのGDPは、日の僅か

1/20いうことになる。 中国が模的には多くの先進国を

凌駕するものの、平均的生活水準からば、発展途上国

と位置づけられている。このギャップが、経済摩擦の前提

なっている。中国は、戦後日本の高度成長と同じく、

加工貿易によ貿易黒字の積に努めた。異なるのは、

日本が民族資本の育成に徹することができたのに対して

経済的、技術的に脆弱であった中国は、経済特区を設置し、安な労働

と土地を提供することにより、外国の資金と技術を入したことであ

そして、外資系企業が中国の出の過半を占めるに至った。

  中国の最大の輸出先であるアメリカは、対中貿易の赤字を縮小するため、の切り上げを強く要求している。元の切り上げが、中国経済に与る影響と中国政府の対応はどのようなものになるのか。その対応が、世界経済、取り分け、日本経済に与える影響はどのようなものになるのか。対中貿易と対中投資の

状を概観した上で、考察を加えてみたい。

  

2.中国の対外経済  

  1)対外貿易

   2001年、中国の貿易総額は5,096億米ドル、(輸出2,661億米ドル輸入2,435億米ドル)であったが、2005年には、貿易総額15,218億米ドル(輸出7,619億米ドル、輸入6,599億米ドル)大幅な増加となった。輸出は3倍、輸入が2.4倍である。貿易収支は、同じく225億米ドルが、1,020億米ドル4倍強に達し

        た。輸出入ともに世界第3位の貿易大国となった

    しかしながら、輸出高の58%は、外資系企業に

   占められており、対外貿易におる外資依存体質は、益々顕著になってきている。

 

                  中国の輸出入(2001年~2005年)米ドル

中国輸出入01~05.png

 

2)外資導入

   対中投資が活発になったのは、1992年に行われた

  鄧小平の南巡講に始まる。中国の経済的立ち遅れを

  実感した鄧小平は、経済特区を設置し、安価な労働力

  と土地を提供することにより、積極的に国企業を誘致

  し、中国に欠如していた資金と技術を導入しようとした。

  この資金と技術を活用して、中国は、輸出・投資主導型の高度成     

  長を成し遂げ、WTO加盟後は、対中投資が更なる飛躍を見せ、「世界の工場」と呼ばれるようになった

 しかしながら、外資依存の状況からは脱却できていない。輸出の55%は加工貿易であり、その殆どが外資系企業に占められ、黒字1,019億ドルの内、844億ドルが外資系

  企業の黒字となっている。

      中国は独自技術の開発に後れをとり、外資系企業との技術競争に苦戦している。いわば、グローバル・サプライチェインに組み込ま れ、外国技術に追随している現状にある。「世界の下請工場」と揶揄される所以である。     

 世界対中投資94~05.jpg

     

 3)国際収支

   貿易黒字と対中投資の拡大により、外貨準備高は、 

   2000年の1,655億ドルから2005年の8,188億ドルに5倍増 

 を達成し、日本を抜き、世界大の外貨保有国となった。

   しかしながら、貿易も投資も、外資依存であり、外貨保有高の過

    半も、外資系企業の稼ぎに他ならない。国内総生産 

  (GDP)2たといわれるが、国民総生産(GNP)

  考えれば、[国内総生産GDP 外資系企業総生産]

  という計算式となり、半分以下になってしまうある。 

  外貨保有高についても、同様であろう。

   資金の蓄積には成功したが、技術的キャッチアップには、未だ道

    遠しの感を拭えない。研究・開発(RD)に至っては尚更である。

   の資金と技術で貿易黒字を稼がなければ、本当の

  実力とはいえない。民族資本の技術的自立が急がれる所

  以である。

   黒字国があれば、赤字国もある。最大の黒字国は中国であり、最

    大の赤字国がアメリカである。外貨保有高の激増の主因が貿易黒字

  であり、その最大の相手国はアメリカである。輸出入の関数が為替

    であり、アメリカが元の為替は公平でないと考えている以上、元の

 切り上げが愈々近くなる。

   外貨準備高01~05.gif

 

 

 

 

 

単位:

億米ドル

 

2000

2001

2002

2003

2004

2005

外貨準備高

1655

2121

2864

4032

6099

8188

 

 

 3.日中経済関係

 1)日中貿易 

   この5年間で日中貿易も倍増。日中航路も活況を呈し、2005の貨物量は286万本(20フイートコンテナ換算)と00年の2倍となった。

   日本は対中貿易で300億ドルの赤字となっている 

   が、対香港輸輸出の300億ドルにより、これを相殺し

   ている。中国の税関統計では、香港経由300億ドル

    を対日輸入に計上しており、輸出入はバランスして 

   いる。これは、中国側が最終仕向け地を採用しているのに対して、

    日本側は、第一次仕向け地に輸出金額を記入しているからであ

    る。

    中国にとって、最大の輸出国はシェア21%のアメリカであり、大の輸入国が11%の日本である。他方、日本は、輸出先一位23のアメリカ、二位13%の中国。輸入先一位が21%の中国、二位が12%のアメリカとなる。

    しかしながら、中国の対日輸出の過半は、日系企業の製品で

  り、対日輸入の相当分も同様と見られる。日本へ輸出される中国製品の基幹部品は、日本企業が供給するものであるからである。

      

           中国の対日貿易(2001年~2005年)米ドル

日本の対中貿易00~05.gif

 

 

 

 

 

単位:100万ドル

 

2000

2001

2002

2003

2004

2005

対中輸出

30427

31090

39867

57219

73818

80340

対中輸入

55303

58104

61669

75192

94227

109104

 

 

2)対中投資

   日本からの対中直接投資も、世界各国と同様、倍増した。中国の

 安価な土地と労働力が日本の資金と技術力と結びつき、更にWTO盟により投資環境が整備されたことが大きい。

   2004年の中国特需は、日本経済回復の大きな原動力となった。

  オールドエコノミーと揶揄された鉄鋼、造船、海運などが復活したのである。70年代は日本自身が牽引し、今回の特需は中国の重厚長大産業が大きな牽引力となったのであった。

   しかしながら、今後の形勢は予断を許さない。中

  国も産業のを目指しており、労働集約型の投資を歓 

  迎しなくなってきた。じく04年に広東で発生したワーカー不足が切掛けである。優遇政見直しや、工場の立ち退きがこれからも起きるであろう。更に大き問題が、コスト増を招来する元の切り上げである。

 

日本の対中直接投資94~05.jpg
 
3)元の切り上げ

   WTO加盟後5年間において、国内総生産(GDP)が

    2倍、輸出が3貿易黒字が4倍、外貨準備高が5倍と 

  全て右肩上がりで推移てきたが、唯一つだけ、1倍台を

  維持しているものがある。それが元の為替レートである。

   外国企業が中国に投資する最大の理由は、安価な土地と労働力で

 った。しかし、元の切り上げが行われれば、価格の

 優位が崩されていく。急激な切り上げが行われれば、

 輸出シェアの過半を占める加工貿易の外資企業が逃避す

 ることになり、中国経済の崩壊を引き起こしかねな中国

 政府が元を8ドルに維持してきたのは、このである。

   だが、巨大な赤字に悩まされてきたアメリカにとって、元の切り

  げは喫緊の課題である。元が低く設定されているが故に中国の対

  米輸出は増加の一途を辿り、アメリカにとって、中国は最大の貿易

  赤字国となっている。

    20061214日、北京において、「米中戦略経済対 

  話」の初会合行われ、代表のポールソン財務長官が、人民

  改革を求め、バーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長が人民

 元相場の上昇を促した。これに対して、呉儀副首相は「市

 場の需給に基づく為替相場となるよう改革を続けていく」と述

 べるにとどまった。同日、人民元高値を更新し、対米ドルで7.81元と 

 なった。

 

         人民元の推移「殆ど横一直線(1ドル7.8元を維持)」

人民元00~05.gif

2000

2001

2002

2003

2004

2005

 

8.27

8.27

8.27

8.27

8.27

8.19

単位:元

 

 

4.おわりに

     日中国交が回復した1972年、日本は1ドル360円の固定

  相場制か変動相場制に移行した。85年のプラザ合意

  で240円から120に一挙上がり、95年には80円を切る 

  まで上がった。しかし、日本の貿易は大きな影響を受け

  ることなく、黒字基調を続けるけることができた。

   中国は、国土が日本の26倍あり、人口は10倍を超える。経済格差、域格差は大きく、社会主義の理想から隔絶してしまった。国力は大だが、一人当たりの所得は、平均すれば、きわめ

  て低い。日本は条件が異なる。  

共産党政府が政権を奪取できたのは、国民党政権の失政による。  れはインフレ、失業、腐敗の三点である。現在、経済的には、失業問題が中国最大の問題である。これを解決するためには、高度経済成長の維持が必須となる。

   日本の高度経済成長がそうであったように、中国も公共投資と輸出

  頼らざるを得ない。しかしながら、景気過熱の回避と投資効率の低下により、現政権は公共投資を削減する方向にある。その上、大幅な元の切り上げを実施すれば、輸出の減少は必至となる。更には、外資系企業の誘致が難しくなる。直

  接、コスト高に結びつくからである。

        中国国内事情から見れば、元の切り上げは得策ではない。しかし、メリカの国内事情からすれば、双子の赤字は依然として大きく早急な解決を要する。しかも、日本の3品目と同じく、選挙区の事情も考慮されねばならない。

中国としてはアメリカの圧力を考慮しつつ、国益を追求していく。

中国経済が受け入れられる程度の小幅な切り上げで、対応せざるを得ない。外資系企業にとっても同様である。他方、対中輸出企業にとっては、切り上げにより、中国の購買力が増加するので、利な展開になる。企業が中国国内にあるのか、国外にあるのかで、正負が変わっていく。

   現在、日本の経済は米中両国の対日輸入にかかっているといって

  も、過言ではない。対米輸出の中国製品の中には、日本製の基幹部

  品が装着されていることが少なくない。為替で問題となるのは、急

  激な変化である。緩やかな変化であれば、中国も対応できる。今後

  も、中国の国内事情と国際関係の変化に注意を払わなければならな

  い。

                                 以上

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