与謝野馨経済財政担当大臣が、NHK日曜討論会でアジアニューディール政策を打ち出すべきだ、東アジア経済圏の形成に力を注ぐべきだという考え方を示した。これは時宜を得た重要な方向性であり、党派を超えて国策として推進すべきだと考える。

 アメリカ発の国際金融危機は先進国ばかりでなく、発展途上国にも影響を与えている。今や世界経済は金融危機と実体経済の悪循環を如何に断ち切るかが最重要課題となっている。そのカギを握るのはアメリカであるが、高度成長期にある中国もまた重要なカギを握る。

日本では中国経済が一大危機に直面していて崩壊寸前にあるかのような報道が多いが、実際には4兆元の景気刺激策が着実に実施されようとしている。地方から上がってきた計画は20兆元以上に達し、今、その選択が行われている。また社区(都市の末端組織)などでは、企業への雇用優遇策や高齢者へのサービス券提供など、雇用維持と需要喚起にきめ細かい措置がとられている。国中挙げての総取り組みである。

しかし、長期にわたる右肩上がりの経済が、急激に下降気味となり、中国の行政官と企業家は戸惑いを感じている。政策の実施に当たっては、試行錯誤が免れ得ないだろう。また中国では金融危機を産業構造の転換と高度化を図るチャンスと捕らえているが、それは当然、一国範囲内ではなく、国際的分業の中で考えなくてはならない。先進国日本との協調の余地は極めて大きい。

 

――「杉伐採労働力受け入れメカニズム」の構築について――

              日中科学技術文化センター理事長   凌星光

7月に開かれた洞爺湖サミットの「主要排出国首脳会合宣言」には、長期目標と、中期目標及び早期に実施すべきことが述べられているが、中期目標の中に「森林」についての項目があり、次のように書かれている。

「排出量の削減とともに、土地の利用、森林火災への取り組みの協力など吸収源の除去量を増加させる行動が、大気中のガス安定化に貢献しうることを認識する。キャパシティー・ビルディングと実証活動や、排出量を削減し吸収源による除去量を増加させるための資金供与を含めた問題について引き続き協力する。また、森林に関連したガバナンスと協力的行動を向上させることの必要性を強調する。」つまり(1)炭酸ガスを吸収する森林の育成によって、「大気中のガス安定化に貢献する」、(2)「吸収源による除去量を増加させるための資金供与」を行う、(3)「森林に関連したガバナンス」の向上を図る、などが謳われている。

――国際金融危機と金融サミットを中心に――

                                 凌星光

 胡錦濤国家主席のワシントン金融サミットでの言動は世界の注目を浴びた。というのは、その経済的政治的存在感が増大しているばかりでなく、経済外交姿勢に新しい特徴が見られるからである。本稿は先ず国際金融戦略に関連付けて中国の外交戦略の変化を論じ、それを踏まえて今回の国際金融危機への対応を分析し、更に胡錦濤のサミットでの発言内容を紹介しコメントする。そして最後に、日中両国の国際金融面での協力の在り方について提案したい。

一 中国の外交戦略と金融サミットへの対応

1 東アジア共同体構想への消極化

10年前、東アジア通貨危機が起こったとき、東アジアでの通貨協力の必要性が痛感され、中国のASEAN10+3への期待はたいへん大きかった。ところが、日本の反対で躓いてしまった。現在、中国では東アジア共同体構築への熱意はすっかり冷めている。もしこの10年間順調な発展をしておれば、今回の米国発金融危機に対して、東アジアがまとまって米欧に対応できたのに、それができないのは残念である。

 

2 欧米矛盾の中での中国の対米協調姿勢

ブラジルでの財務大臣・中央銀行総裁会議で、EUと米国との矛盾が顕在化した。中国は主張面ではEUに近いが、米国への配慮を忘れないであろう。EUはまとまっていない、ユーロは暴落していてドルの強さは明白、米国経済力の優位性は揺るがない、5000億ドル余りの米国国債を保有しているなどにより、中国は基本的に対米協調姿勢をとるであろう。とりわけ中長期的には、オバマの経済思想への期待感もあって、米国重視の姿勢をとると見られる。

 

日中科学技術文化センター創立30周年記念講演会(20081027日)

当局の四川大地震への対応について

――発言原稿――

                                凌星光

 

 今年の512日、中国の四川省でマグニチュード8の巨大地震が発生しました。その地震エネルギーは阪神大震災の30倍の規模だそうです。それが何と今年の8月に開始される北京オリンピック開催の三ヶ月前に発生したのです。しかも年初には歴史上稀に見る南方地域での大雪災害に遭い、大きな試練に耐えたばかりのときでもありました。

 この巨大地震は中国全土に大きな衝撃を与えたばかりでなく、全世界の注目と同情を集めました。5月、6月時点では、救助救援活動が大きく報道されましたが、7月、8月には北京オリンピックの報道で埋まりました。しかし、震災地では間断なく震災復旧作業が行われてきました。ここで、この五ヶ月間の中国当局の対応を総括し、今後三ヵ年の復旧再建計画を簡単に紹介したいと思います。

当局の四川大地震への対応

                 日中科学技術文化センター理事長   凌星光

まえがき

 今年の512日、中国の四川省でマグニチュード8の巨大地震が発生した。その地震エネルギーは阪神大震災の30倍の規模だそうだ。それが何と今年8月に開始される北京オリンピック開催三ヶ月前に発生したのである。しかも年初には歴史上稀に見る南方地域での大雪災害に遭い、大きな試練に耐えたばかりのときであった。

 この巨大地震は中国全土に大きな衝撃を与えたばかりでなく、全世界の注目と同情を集めた。5月、6月時点では、救助救援活動が国内外で大きく報道されたが、7月、8月に入ると北京オリンピックのニュースで埋まるようになった。しかし、被災地では間断なく震災復旧作業が行われてきた。ここで、この五ヶ月間の中国当局の対応と実際の動きを総括し、今後三ヵ年の復興再建計画を簡単に紹介したい。これからの中国を理解する上で、よき参考になると思うからである。

研修・実習生制度を巡る論争についての私見

               日中科学技術文化センター理事長    凌星光

 

 20077月、筆者は「日本の研修・技能実習制度の改革について」と題する論文を書いた。その後、日本での論議はますます盛んになり、正に百家争鳴という状態が生まれている。そこで、主要な争点に対する私見を述べ、前述論文の補足としたい。

 

1 研修・実習生制度の国際的位置づけについて。

 1960年代に始まった研修生受け入れ制度及び1993年から実施された研修生・技能実習生制度の本来の目的は、発展途上国への技術移転にあった。それは南北格差の縮小、発展途上国への支援という崇高なる理念に基づく。ところが、最近の論議はこの視点が全く欠けている。国連の定めたミレニアム目標の達成に当たって、国際労働力移動の経済的効果については立証済みである。日本の模索しつつある研修生制度および外国人労働者受け入れの論議は、国際的人的交流の促進という視点を忘れてはならない。それは、国際労働力移動の促進、発展途上国の近代化促進のモデルケース創出という世界的意義のあることに繋がる。

 

 アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)が今年末に正式に発足することが報道された。本部は北京に設置される。中国主導の機構であると言われているが、それが日中主導の宇宙平和利用推進機構となるべく日中両国が協力するよう提案したい。

中国国家航天局(CNSA)孫来燕局長は、今年の930日、イギリスのグラスゴーで開かれた第59回国際宇宙会議で「9カ国が参加を決定しているが、より多くの国の参加を希望する」と呼びかけた。日本は先般、宇宙基本法が施行され、内閣に宇宙政策の仕切り役となる宇宙開発戦略本部が設置された。日中両国政府が話し合って、日本もこの機構に参加することを決定し、日中両国主導で、米国、EU、ロシアの協力を取り付けながら、宇宙の平和利用の推進役となるシナリオが考えられる。

 

――中国鉄道事情(3)――

 

 高速鉄道技術は西欧で始まり、日本がそれを開花させ、西欧で大規模な発展を見た。今やそれは中国に渡り、ユーラシア大陸で大発展を遂げようとしている。

 日本は1964年に新幹線を完成させ、高速鉄道の先駆けとして世界各国に影響を与えた。1981年にフランスのTGVがはじめて運行し、それ以来、仏独などヨーロッパを中心に高速鉄道のネットワークが形成された。その後、カナダ、アメリカ、メキシコなどでも高速鉄道の発展を見るに至った。現在、中国がその仲間入りをし、今後10数年間で高速鉄道地図を塗り替えようとしている。イギリスの92日付ファイナンシャルタイムズによれば、アジアの鉄道はすごいスピードでヨーロッパを追い越すと予測している。

 

――中国鉄道事情(2)――

           

 中国は鉄道発展の黄金時代にあると言われている。五年位前、既存鉄道のスピードアップがマスメディアを賑わしていたが、モデルケースと位置づけられた北京・天津間高速鉄道の予想を上回る成功によって、今、高速鉄道建設計画が目白押しとなっている。

長い間議論されてきた北京・上海間の高速鉄道については、日本の新幹線かヨーロッパの高速鉄道か、それともリニアモーターカーかという論議があったが、それに結論が出た。中国の自主開発技術による高速鉄道建設である。現在の時速350キロを更に高め、380キロに達する予定である。今年4月にすでに着工し、2012年に開通する予定である。北京・上海間の距離は1318キロで、世界での最長距離高速鉄道となるとのことだ。現在、北京―上海間は1012時間かかるが、高速鉄道が完成すると4-5時間に短縮され、航空輸送の2時間に対抗できるとしている。