与謝野馨経済財政担当大臣が、NHK日曜討論会でアジアニューディール政策を打ち出すべきだ、東アジア経済圏の形成に力を注ぐべきだという考え方を示した。これは時宜を得た重要な方向性であり、党派を超えて国策として推進すべきだと考える。
アメリカ発の国際金融危機は先進国ばかりでなく、発展途上国にも影響を与えている。今や世界経済は金融危機と実体経済の悪循環を如何に断ち切るかが最重要課題となっている。そのカギを握るのはアメリカであるが、高度成長期にある中国もまた重要なカギを握る。
日本では中国経済が一大危機に直面していて崩壊寸前にあるかのような報道が多いが、実際には4兆元の景気刺激策が着実に実施されようとしている。地方から上がってきた計画は20兆元以上に達し、今、その選択が行われている。また社区(都市の末端組織)などでは、企業への雇用優遇策や高齢者へのサービス券提供など、雇用維持と需要喚起にきめ細かい措置がとられている。国中挙げての総取り組みである。
しかし、長期にわたる右肩上がりの経済が、急激に下降気味となり、中国の行政官と企業家は戸惑いを感じている。政策の実施に当たっては、試行錯誤が免れ得ないだろう。また中国では金融危機を産業構造の転換と高度化を図るチャンスと捕らえているが、それは当然、一国範囲内ではなく、国際的分業の中で考えなくてはならない。先進国日本との協調の余地は極めて大きい。
他方、成熟した日本経済の維持と発展にとって、発展する中国経済との協力は不可欠である。2002年10月、ASEAN10+3(日中韓)非公式首脳会議で、東アジア共同体の構築が将来の目標と定められたとき、東アジア諸国の有識者は大きな期待を抱いた。もともと、東アジア共同体構想は日本が1980年代後半に提起したものであり、当然、日本もそれに反対する筋合いのものではなかった。
ところが、中国の存在感が急激に増大し、ASEAN諸国への影響力も強くなっていったことへの反発心理から、日本において東アジア共同体は中国が「覇権を求める場」という見方が主流を占めるに至った。これは中国当局及び有識者の大きな不満と誤解を招き、中国における東アジア共同体への期待はすっかり冷めてしまった。そして、米中主導の国際秩序構築に傾斜していき、今回の国際金融危機でそれが一層明白となった。
日本の政治家も有識者もここにきて、日本の国際社会での「周辺化」に危機感を抱くようになった。「価値観外交」や「自由と繁栄の弧」の論は陰を潜め、中国を含む東アジア諸国との協力強化が世論の主流となってきた。日本のこの新しい傾向に中国は前向きに対応しようとしている。
温家宝総理は12月13日に開かれた日中韓三カ国首脳会議で六つの提案を行った。そして発言の中で、ASEAN・日中韓(10+3)協力への積極的参加、とりわけ金融分野での協力を強調した。今回の与謝野大臣の東アジア経済圏の構築や東アジアニューディール政策の提起が、中国の東アジア共同体構想への積極性を喚起することとなろう。
今、国際金融危機を契機に、東アジア共同体構築を巡る世論の好循環が形成されつつある。ASEANを前面に立てて、中国と日本がそれを両脇から積極的に支えていく図式を一層強力に推進していくべきである。
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