環境対策の一環として外国林業技能者の受け入れを

――「杉伐採労働力受け入れメカニズム」の構築について――

              日中科学技術文化センター理事長   凌星光

7月に開かれた洞爺湖サミットの「主要排出国首脳会合宣言」には、長期目標と、中期目標及び早期に実施すべきことが述べられているが、中期目標の中に「森林」についての項目があり、次のように書かれている。

「排出量の削減とともに、土地の利用、森林火災への取り組みの協力など吸収源の除去量を増加させる行動が、大気中のガス安定化に貢献しうることを認識する。キャパシティー・ビルディングと実証活動や、排出量を削減し吸収源による除去量を増加させるための資金供与を含めた問題について引き続き協力する。また、森林に関連したガバナンスと協力的行動を向上させることの必要性を強調する。」つまり(1)炭酸ガスを吸収する森林の育成によって、「大気中のガス安定化に貢献する」、(2)「吸収源による除去量を増加させるための資金供与」を行う、(3)「森林に関連したガバナンス」の向上を図る、などが謳われている。

今、日本は杉の木を間伐し、新しく植林することが大きな課題となっている。それは森林保全による水資源の確保と環境保護の面で重要であるばかりでなく、成長する樹木であってはじめて炭酸ガスを吸収できるため、地球温暖化対策にもなるからである。中国、インド、アフリカなどは森林カバー率が低く問題だが、日本は間伐すべき杉が労働力不足とコスト高によって伐採できないのが問題となっている。

そこで、どうやって林業労働力を確保するか、いろいろ工夫がなされている。例えば、都市からボランティアを募って、山間地域へ赴き泊りがけで杉やヒノキを間引きするなど。また都市にある森林関連企業が従業員を組織して間伐に行くようなことも試みられている。都市と山間部との交流が深まりつつあることは望ましき傾向だ。しかし、それは焼け石に水程度のものであろう。間引き労働者の不足という基本的問題は解決できない。

ここで考えられるのは、中国から林業技能労働者を受け入れ、日本の杉を伐採し、その木材を中国に輸出するという案である。コストは主として労働賃金と輸送費で、今までは採算が合わなかったが、木材価格の上昇により、採算が合う可能性が出てきた。そのため、企業レベルでは、中国から林業技能者を受け入れ、杉間伐の事業を展開しようとする積極性が出てきている。それを政府が資金と制度面でバックアップすれば、極めて効果的な仕組みが出来あがるであろう。

現在、中国でも市場経済が発展し、労務関係でも、日中間で市場原理に則った交流が進められている。例えば、研修生事業はまだ多くの欠陥を抱えているとはいえ、長年の経験を積み上げることによって、かなり成熟したな仕組みが出来ている。林業技能労働者の受け入れも、その中に組み入れることが考えられる。但し杉伐採は持続的なものではないため、別途、期限付け仕組み(例えば1015年)をつくることもひとつの選択だ。

なお、日本が受け入れる中国の林業技能労働者は、中国のこれからの林業発展において、末端レベルで中心的役割(班長)を果たすことが望ましい。それ故、中国各山岳地帯の青年団員または林業専門学校卒業者など、一定の社会的責任感とリーダーとしての素質のある者を選抜し、日中両国政府担当部門によって作られた枠組み、即ち公的部門の指導と市場原理に基づくオペレーションを結合させた仕組みで運営されなくてはならない。

ここで強調したいことは、中国林業技能労働者を受け入れて、日本の杉伐採と植林及び帰国後の日本の経験を活かした中国での植林強化は、「吸収源による(炭酸ガス)除去量増加」という洞爺湖サミットの謳った中期目標と完全に一致する。早急に上述した仕組みを作るよう提案したい。

なお、当センターは早くから環境・省エネ問題に取り組み、森林保護に関する提案もしてきた。参考資料としての付録「森林保全のための外国人受け入れ計画」を見ていただきたい。それから、今年3月、東京大学で博士号を取得した陳鐘善氏(現在、大連理工学院に在職)は、林業の社会的効果についての専門家である。中国側の対等パートナーとなるべく組織を作ることが考えられる。

以上の提案について、日中両国政府の担当部門が検討してくだされば幸いである。

2008722

 

付録

森林保全のための外国人受け入れ計画

 

社団法人日中科学技術文化センター

理事・事務局長 大類善啓

NPO法人愚公医山堂 

専務理事 飯沼信彦

  

 国家の存亡に関わる森林保全のためには、早急に改善策を打ち出さなければならない状況である。そのためにはまず、①既存の在留資格にある「研修」の中に、林業という業種を設けて外国人研修生を受け入れることである。もしそれが難しいのであれば、②新たに、「林農技能」という在留資格を設けて受け入れていくべきであると考える。この場合、1015年の時限立法でもいい。国家全体の方向に帰趨する大幅な政策転換、例えば、大量の移民を導入するような政策などは、議論が百出して早急に対策を講じられないが故に、敢えてこのような提言を行うものである。

 

1 ① 既存の在留資格である「研修」に林業という業種を加える

    新たな在留資格として「林農技能」(アグロフォレスター)を設ける

 

2 在留期間 3年 (②の場合、諸般の事情が許せば、在留期間延長も可能とする)

 

3 待遇 ① 研修資格の場合は既存の研修生制度に合わせる

    月収25万円(年収300万円) 

 

4 就労先 ① 地域の担い手支援協議会、またその構成メンバー(JA、市町村、農林業者など)

      ② 鳥獣害対策協議会 またその構成メンバー

      ③ 林業経営体(森林信託会社、素材業者、森林組合などを含む)

      

 

5 受け入れ予定人数

   平成21年 2000人

   平成22年 4000人

   平成23年 6000人

   平成24年 8000人

   平成25年 10000人

 

6 受け入れ予定人数の算定根拠データー

   データー① 林業従事者のリタイアー数は、今後5年間で2万人と推測される

   データー② CO2吸収源対策森林整備要員が今後5年間で10万人を必要とする

   データー③ 平成19年度から5年間のCO2吸収源対策整備要員予算3500億円

         を活用して、外国人林業技能者の雇用を側面から援助する

 

 

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コメント(1)

黄 哲松 : 2010年1月13日 10:48

社団法人 日中科学技術文化センター 
理事長 凌星光 様

はじめまして、黄と申します。
 ブログにも出ている「陳鐘善」の友達です。中国の大学時代から同級生であり、東京大学農学部では同じ研究室で勉強をしました。
3年前帰国したときに、NPO法人愚公医山堂の専務理事である飯沼信彦様と初めてお会いできて、色々お話しを伺いました。その後、日本に戻ってから、飯沼様が弊社に来ていただいたので、一緒に愛知県の新城の森林組合の方やベンチャー企業の社長(元林野庁出身の菅野様)も紹介していただきました。
 その後、菅野社長も弊社に来ていただいて「林業への外国人研修生・実習生の受入れ」に関して、いろいろ意見交換をした経緯もございます。
 昨夜、テレビ番組で林業(森林整備)関連番組がありました。私は営林署(林場)出身で小さい頃から山や森には相当な関心があったので、番組を見てなんとなく内心からの感動を感じました。
 今日、偶然理事長様のブログを拝見できまして、勝手ながらメッセージを遅らせていただきます。
 私は現在日本国籍の取得(帰化)の申請中であることもあり、これからの日中韓を中心とする国際貢献にも微力を捧げたいなとの願望も強いところでございます。
 ブログを拝見できまして、いろいろの情報確認や勉強ができましてありがとうございました。いち早く林業への外国人研修生の受入れが実現できればと願いながら、今日はここまでにし、失礼致します。

格式会社 テクノスマイル 
豊田支店 国際事業部
 黄 哲松
携帯:090-62956657 
 

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